教員にとっての新たな価値、校務用に Chromebook™ を採択/浜松聖星高等学校(前編_校務用)
浜松聖星高等学校 は2017年4月1日に男女共学化となり、新たな一歩を歩み始めた静岡県西部唯一のカトリック系ミッションスクール。世界の大きな変化を見通し、これからの社会を生きていくために必要な力を育むため「国際教養教育」「ICT教育」そしてカトリックに基づく「心の教育」を教育目標として掲げています。
2019年より本格的に取り組みを開始する生徒向けのICT教育に先駆けて、教員が日々使用する校務用パソコンを Windows PCから ASUS Chromebook へ切り替え実施されました。今回はその経緯や導入背景について 浜松聖星高等学校 事務長 櫻井伸吾氏にお話を伺いました。
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ー 校務用パソコンを Windows PCから Chromebook へ切り替えされた背景について教えてください
実は初めから校務用パソコンを Chromebook にすることを前提に検討を開始したわけではないんです。当時、本校の 北脇理事長 から生徒1人1端末の環境を早期に実現して、ICT教育を推進するよう命を受けておりまして、各種検討を進めていました。
2018年5月下旬頃、Google とストリートスマート、NTTドコモ東海の共同セミナーが愛知県名古屋市でありまして、そこに参加させていただいた際に Chromebook という存在に初めて出会い、”起動の速さ・コストパフォーマンス・管理のしやすさ”にとても興味を持ちました。セミナーの場で Chromebook の実機を直接触ることができたこともとても大きかったと思います。
検討を進めていく中でひとつの思いが生まれました。Chromebook は生徒向けの端末として検討するだけではなくて、校務用パソコンとしても利用できるんじゃないか。私なりの立場でトータルでみた際に Chromebook や G suite for Education が本校が抱えている問題に対して、一つの解決策になり得るのではないか。その結果、生徒向け端末の利用に先駆けて、校務用パソコンを Windows PCから Chromebook へ切り替えを行うところから開始した。というのがそもそもの背景となります。
ー 生徒の利用に先駆けて、ということは既に生徒向けには Chromebook を採用されることを決定されているということでしょうか
はい、決定しています。おそらく教員の校務用パソコンと生徒のICT端末を Chromebook で統一している教育機関は、現時点ではなかなか先進的な取り組みかもしれませんね。端末は教員と同じ機種の ASUS Chromebook Flip C213NA-N3350 です。
ー 過去に抱えられていた問題とはどういった内容だったのでしょうか
すべて Windows 環境下でICTの活用を本格的に推進していくとなれば、全体の運用知識や校内に専門のスタッフを配置するなどの必要性を感じていまして、本校の規模では費用面を含めなかなかそれを十分にまかなえないのではないかという現実問題がありました。Chromebook や G Suite for Education を活用することで比較的低コストで校内のICT環境を再構築できると考えました。
ー 校務用パソコンを Chromebook に切り替えるにあたり、取り組みされたことを教えてください
各教員が Windows PC内に保存していたデータ関連を Google ドライブのクラウド領域へ移行しまして、合わせてネットワーク内にあった共有領域も Google ドライブ内に共有領域の再構築を行いました。なお Windows PC時代に利用していたアプリケーションソフトが Chromebook では動作しないものもいくつかありましたので、その辺はある意味割り切って他のアプリケーションを利用することで代替を進めました。
また過去に使用していた校務用の Windows PCは現時点ではまだ教員から回収をしていません。そのまま必要に応じて使用してもらっています。ただ将来像として校務用パソコンは Chromebook に集約し、不足する部分は Windows PCの共有端末でカバーしていきたいと考えています。今後の移行スケジュールはその都度職員全体に伝えながら、順次移行を進めています。
ー 例えば実際の校務においてどのような場合に Windows PCが必要でしょうか
長年 Microsoft Office を利用してきた環境がありますので、それらを多用して作成した Microsoft Word や Excel 形式のファイルがたくさんあるということですね。Google ドキュメントやスプレッドシートへの移行が可能なものも当然ありますが、微調整する必要があるなど、ファイル単位で完全に移行が仕切れていない部分もあります。
それ以外には、教科書や指導書に添付されているDVD-ROM内に校務で使用可能な素材があったり、場合によってはプログラムファイルが保存されていたりするのですが、それらが Windows 環境を前提に用意されているため、Chromebook では利用できないものもあったりします。あと現時点では教務システムは Windows 環境が前提になってしまっています。この点については現在クラウドサービスのシステムへの移行を進めていますので、時間の問題かなと思っています。
新しいものを取り入れようとした際には、どうしても「過去に出来ていたことが出来ない」という部分ばかりに目がいってしまうかもしれません。そうではなくて「今まで出来なかったことが出来るようになったら、その利便性が新たな価値」だと思うんです。その段階で初めて利用者が新しい環境に馴染んだといえるかもしれません。
ー その環境はいつ頃にやってくると思われますか
それほど遠くないと思います。自分が思っていた以上に利用者が Chromebook や G Suite for Education のメリットを活かし業務に活用し始めてくれています。ゼロのまま立ち止まっていれば遠い未来ですが、一歩歩みだせばあとは前に進むだけですしね。
ー 実際の利用者である教員の方々の反応はいかがでしょうか
当初、慣れない端末に戸惑う人は少なくなかったと思います。「Windows PCでは出来ていたのに、Chromebook だと出来ない」最初は出来ないことばかりが目についてしまっていて、正直、進捗が順調ではなかったかもしれません。
ですが Google ドライブ内の共有領域に校内のデータを移行してクラウド化、校内で使用するデータファイルを Google ドキュメント や スプレッドシートにファイル形式を変換したことで教員間のデータファイル共有がとてもスムーズになりましたし、職員会議で Chromebook を利用してペーパーレス化が実現できたり。Chromebook と G suite for Education だからできることにも目を向けてもらうことで、現在は少しずつ利用が進んでいるように感じています。
あとよく言われるのは、なぜ Google や Chromebook なのかっていうところ。外部とのメールやり取りの際にはやはり Microsoft Word や Excel 形式でデータファイル添付されていますので、それに対して本校の環境がいわゆる周りの標準と差異があるということに対して「あえてどうして?」っていうような声も無いことはないです。ただ校務利用が一番の目的と考えているわけではないんです。校務で Chromebook を使ってもらってるのは”本校におけるICT教育の実現”という最終目標への通過点だと思っているんです。
ICT教育を推進する上では、改めてそのシチュエーションで利用する端末の操作方法や特徴を覚えてもらおうとしても、非効率だと感じていました。しかし日々、校務の中で自然と利用しているような状況下であれば、実際にICT教育の場で活用するとなった際にも教員の操作スキルのベースができてますので、そういう意味で先行して校務利用することでスムーズにICT教育に入っていけるのではないか、という狙いもあったりします。
ー 運用を開始して目に見える変化を何か感じ取ることはできていますか
教員間のデータファイルの共有の容易さ以外には、単純に印刷物の使用を確実に減らせています。過去には一度しか目を通さないようなたくさんの印刷物もありましたが、そのほとんどを無くすことができました。会議の際にも今までは資料を印刷物で配布していましたが、現在は一つのデータをそれぞれの Chromebook の画面上で確認して、場合によってはその場で編集を加えています。編集された内容が瞬時に教員全員の目に写りますので情報の共有が以前に比べて、とてもスピードがあがったと思いますし、コミュニケーションが取りやすくなったと感じています。
あと私含め校務用パソコンを Chromebook に完全移行した人の声としては Windows PC と Chromebook の両方を都度、端末レベルで使い分けるという中途半端な状態が一番不自由というか、使い勝手が悪い感じがしました。割り切って日々の校務の中心を Chromebook に移行してしまうと意外とすっきりして楽だったりするのですが、利用者の中にはまだまだその辺りに対しての不安とか抵抗感がある人もいますので、その辺は時間をかけてでも慣れ親しんでいってほしいと思います。
ー 最後に生徒用のICT端末の方向性について伺わせてください
現在は情報処理室とCALL教室に各40台の Windows PCが配備されています。これらに加えて2019年4月には生徒用 Chromebook 40台を導入する予定です。この40台は生徒の共有利用となりますが、更に1年後の2020年の新入生からは1人1端末を実現させてく予定です。それに伴い、普通教室にWi-Fi環境と大型モニタを整備して Chromebook をフル活用していきたいと考えています。
- Google, G Suite for Education および Chromebook は Google Inc. の登録商標または商標です。