ICT教育は12年前からスタート、Google for Education 事例校が採用するASUS Chromebook と今後の未来/日本体育大学柏高等学校
「健康と信用は最高の宝」を建学の精神に、スポーツの盛んな進学校を目指して文武両道を掲げる日本体育大学柏高等学校。サッカーや相撲をはじめ各界のプロアスリートたちが同校から多数輩出されている。進学実績、部活動・クラブ活動実績ともに好調な同校の学びの中心にはASUS Chromebook と Google for Education がある。早くから取り組み始めたICT教育と現在へ至る変遷など、同校 学年主任の酒巻圭一教諭と進路指導部 情報システム課の中村亮介教諭に話を伺った。
生徒の未来を育む3つのコース
日本体育大学柏高等学校には、個々の生徒が目標としている進路に応じて、アカデミックフロンティアコース、アドバンストラーニングコース、アスリートコースの3つのコースがある。
アカデミックフロンティアコースでは、創造力・起業力などを育成し、難関大学への進学を目指す。企業インターン、企業・大学と連携したゼミ活動なども実施。チームごとの自治活動の企画や運営などコース独自の取り組みもある。
アドバンストラーニングコースでは、探究学習や専門分野など校内外でのさまざまな体験を通して主体性ある人材を育んでいく。1年次には企業インターンもあり、2年次からのコース選択(人文・社会科学専攻、自然科学専攻)へ向けて基礎を学んでいく。
アスリートコースでは、スポーツを通して社会に貢献できる人材育成を目指す。コンディショニング、スポーツ栄養など理論と技術を幅広く身につけ、世界で活躍できる一流競技者・指導者を育むプログラムが用意されている。
それぞれのコースが特色あるカリキュラムのもと、ICT活用を通じて日常的に先進的な学びを推進している。
生徒の特性に合わせた端末選定
同校では他校に先駆けて2011年からICT教育を開始している。「ICTを活用して何かをする時がやって来るのではないか」と試験的に1コースだけ導入したことがきっかけだったという。当初導入したのはちょうどその頃に登場したiPadだった。
酒巻教諭は、「一般社会で情報共有やクラウドなどが浸透し始めていました。導入当初は、情報のデータ化や共有といった初歩的なことだけですが、フォルダに入れたファイルを生徒が取り出して閲覧したり書き込んだり。当時は端末を貸与しており、生徒が『楽しい』と活用してくれて、翌年も、翌々年も3年にわたり実施しました。一定の教育効果があり、生徒も前向きに取り組めるツールになり得るだろうと、次の年から学年全てに導入しました」と振り返る。
そうしてiPadを活用して6年。その間に大学入試におけるCBTの話題が生じたことで、特進コース(現在のアカデミックフロンティアコース)にはタイピングができるキーボード付きの端末が適しているだろうと方針を転換。レポート作成なども多いため、より論理的な思考ができるようノート型のChromebook に切り替えた。
「ここでも一定の効果が得られたので、アドバンストラーニングコースにも広げました。ただ、このコースでは持ち運びを含めて手軽に使える部分も残したいという意向から、キーボードの取り外しが可能なASUS Chromebook Detachable CM3 を選択しました」。
ASUS端末は現在、ASUS Chrombook Flip CR1、ASUS Chromebook Detachable CM3 、ASUS Chromebook Detachable CZ1の3機種が導入されている。
ベテランから若手に繋いだICT活用
早期からのICT教育が、結果として他校との差別化を図る大きな要因にもなったという。同校に着任して14年目の酒巻教諭は、2022年度まで情報システム課で課長を務め、同校にICTを取り入れた立役者と言える。そして、ICT活用が軌道に乗りはじめ、1人1台端末となって以降、同校に着任したのが中村教諭だ。
同校ではもともと授業支援にロイロノート・スクールを活用している。その後、Google for Education の利用を始めるが、その前身にあたる Google Apps で既にアカウントを取得していた。しかし、「現場で何かをするスキルが当時はまだなかった」と振り返る。「眠らせていたところ若手が入ってきて、『やりましょう』となり、引っ張り出してきました」(酒巻教諭)。
「1年目は、ただデータ送信したり宿題を集めたり。どうしたらもっとICTで生徒に学ぶ機会を与えられるかと考えました」という中村教諭。現在、着任して6年目。3年目から情報システム課に所属し、コロナ禍のタイミングでロイロノート・スクールや Google for Education などのイベントに参加するようになったという。率先して資格にも挑戦。「ロイロ授業デザイントレーナー」に加え、最近は「Google for Education 認定コーチ」「Google for Education 認定トレーナー」も取得している。
学校としては、2022年11月に「ロイロ認定校」、2023年6月に全国で数十校程度しか認定されていない「Google for Education 事例校」の認定を受けている。
年々上達する生徒たちのICTスキル
授業風景を覗くと、生徒が思い思いに端末を活用している姿が見られた。授業で最も多く活用するのは、Google Classroom からの課題配信やテスト返却だという。そこに外部アプリケーションも組み合わせて使う教員も多い。
生徒も、たとえばプレゼンテーションの資料づくりには、Google スライドで作成する生徒もいれば、グラフィックデザインツールのCanvaで作成する生徒もいる。生徒自身が自由にアプリケーションを選択し活用する柔軟さを持ち合わせている。
「アプリケーションの使い方を知らせるために限定することはありますが、押し付けることはしません。それが使えるようになった時に、“自分で適切なツールを選んで使うことができる環境”を作ることが学校として大事だと考えています」と中村教諭。ICTを常用する中で、生徒の資料づくりが年々上達していると感じるという。「アプリケーションの使い方を知らせるために限定することはありますが、押し付けることはしません。それが使えるようになった時に、“自分で適切なツールを選んで使うことができる環境”を作ることが学校として大事だと考えています」と中村教諭。ICTを常用する中で、生徒の資料づくりが年々上達していると感じるという。
生徒同士で端末を見せ合いながら意見交換する場面も日常的だ。アクティブラーニング型の授業を行う上でICT活用は相性が良い。授業形式も指導型からより自由度が上がり、生徒にとって議論を交わすコミュニケーション力を身につける機会にもなっている様子だ。
部活動も進路指導もICT活用で効率的に
部活動・クラブ活動にも Google for Education が役立っている。たとえば、練習試合を動画で撮影し、データを共有ドライブに入れて分析の資料とすれば、生徒には試合の振り返りや今後の戦略の見立てなど、チームを強化する貴重な材料になる。
一方で、この動画を YouTube にアップし限定公開で保護者に共有すれば、応援に行けなかった保護者もいつでも観戦することができる。子どもの頑張りを確認できることで満足度も上がり、次回の応援のモチベーションにもつながりやすい。同じデータでも目的を変えて利用することで違った意味合いが生まれ、それぞれに対して有効活用できる。
「これまでは振り返りも一緒に動画を見ながらでした。今では、共有のスプレッドシートやドキュメントを作っておけば意見が集約できます。自宅でもどこでも各自で動画を確認し、内省が揃い、事前準備をした上でミーティングに入れます」(酒巻教諭)。
進路指導部を担当する中村教諭は、ここでも Google for Education を基盤に生徒をバックアップしている。同校独自の進路教材のワークシートを用意し、志望理由書などの採点は Google ドキュメントを使ってコメントを返信するなど、生徒と丁寧なやり取りを交わしているという。模試データなど教員間での情報共有も同様にWebベースで管理している。
「なりたい自分」の実現に
同校では1人1台端末となった2015年に新校舎を竣工。それを機にコンピュータ教室を撤廃し、これからは“あなたのいる場所がコンピュータ教室”としてICT活用とともに新たな学びをスタートさせている。
2025年からはBYODに向けた動きも視野に入れている。端末に必要なスペックのみ提示して、生徒には自由に端末を選定して活用してもらいたいと酒巻教諭は説明する。端末はあくまで手段。固定することなく状況に応じて活用してほしいと中村教諭も続ける。今後、デジタル世代がますます増える。学校は、生徒の興味関心を広げ、個性や可能性を伸ばすためのカリキュラムの用意や生徒への関わりが重要だと考えているという。
「なりたい自分」を目指して学びにスポーツに打ち込む同校の生徒。夢の実現に向かってICT活用は大きな武器となっているようだ。