導入は少人数から多人数へ、生徒主体で多様に活用する Chromebook™/長崎総合科学大学附属高等学校
長崎総合科学大学附属高等学校は、長崎県長崎市にある私立高校。県内唯一の理工系私立大学である長崎総合科学大学の附属校で高大連携による授業科目を取り入れているのが特色。2021年、1年生全員に1人1台のASUS Chromebook Detachable CM3を導入し、ICT授業に役立てている。スムーズな導入のコツ、生徒主体の多様な活用について同校エンジニアコース長 NiAScience部顧問 長郷繁雄教諭に話を聞いた。
1人1台端末、3つの点を重視した端末選定
GIGAスクール構想により小中学校の端末導入が全国で進む中、遅れる高等学校の環境配備は急務であったが、理工系大学の附属校である同校も同様だった。生徒の学びの変化、大学との連携にはICT環境が必須であることから、2021年、創立60周年を迎え「エンジニア」「文理ハイブリッド」「地域ビジネス」「スポーツマネジメント」の4つのコースを新設したことを機に同校は生徒1人1台の端末やネットワーク環境整備を行った。
2021年7月、1年生全員にASUS Chromebook Detachable CM3の導入が決まった。選定にあたって、携帯性、端末の設置スタイル、スタイラスペンの利便性を重視したと長郷教諭は語る。
◆携帯性
地域社会との連携でフィールドワークが多い地域ビジネスコースは携帯性が重要だ。スタンドカバーや着脱式キーボードを取り除くと506グラムとペットボトルと変わらない重さのタブレットになる。校外の活動はタブレットスタイルで持ち出す生徒が多い中、移動の車内での情報整理のためにカバーやキーボードを持参する生徒もあって好みに合わせて自在に利用する様子が見られるという。
◆端末設置スタイル
机の上で生徒が様々な活用をすることを想定し、ASUS Chromebook Detachable CM3が縦置きにも対応している点は魅力だった。例えば授業中は電子黒板を端末に投影したりするには横置きが使いやすく、紙のノートの代わりに使うなら慣れた縦置きが使いやすい。
◆スタイラスペン
筆圧検知が可能なASUS USI Penはメモやスケッチに便利だと考えた。本体に収納すれば15秒で45分使える急速自動充電機能があり、「ペンが電池切れで使えない」といったいつか起こり得るかもしれない懸念点から解放される点も非常に有効だという。
「端末は期待通りだ。もう1点追加すると活用が進んだのは、生徒が使いたくなる洗練されたデザインであったことも大きい」長郷教諭は振り返る。
導入は少人数から始めて多人数への展開が効果的
夏休み中の8月、長郷教諭が顧問を務めるNiAScience部(Nagasaki Institute of Applied Science: ニアス=長崎総合科学大学 & サイエンス)から端末の使用を開始した。多人数へと一気に展開せずパソコンを得意とする少人数の生徒から使用を開始したことが効果的だった。まずはアプリの使用可否の検証から生徒ら自らが着手した。Google ニュースがフィルタされて閲覧できないなど実際の授業で使う上で生徒にとって不便な点、不足する点をリストアップする。生徒主導で必要なものをまとめて、長郷教諭が保護者の同意を取得し設定を変更した。多人数への配布前に生徒自らが学校内での基本となる環境設定を整えた形だ。
学校活動に貢献した生徒にとってこの取り組みは自身の大きな自信につながった。その後、校内のイベントでも積極的に動画編集を買って出るなど変容があったという。
次の段階として夏休み明けの9月、エンジニアコースの生徒27名に端末を配布し、学校環境に即した Chromebook の基本設定を実施。端末操作を得意とするコースに属する生徒たちだ。それでもいくつかの改善が必要と思われる事項が発見できたためめ、生徒自らそれらをまとめてFAQ集を作った。このFAQは今後、これらのICT端末を活用し始める他のコースの生徒のためのものである。そして数週間遅れて文理コース、地域ビジネスコースへと端末を配布。最後にスポーツマネジメントコースという具合に展開した。あらかじめ蓄えた情報を活かした上で多人数に配布を行ったため、非常にスムーズに短期間に利用を開始できたと長郷教諭。
多様な学びに活用が拡大する Chromebook
導入から数カ月が経過し、それぞれ特色のある4コースで Chromebook は多様な学びに活用されている。「エンジニアコース」ではプロジェクト型の協働学習で Google Jamboard を活用。カーボンニュートラル、自己目標の達成など多岐にわたるテーマで意見を集約、協働で資料をまとめプレゼンを行う。Webページ制作では Google サイトを習得。中学生対象のOPENスクールでもエンジニアコースの生徒らが先生役として活躍した。紙と比較し他者と共有しやすく便利、デジタルツールを使いこなすという誇りからも非常に生徒は積極的だという。
「文理ハイブリッドコース」では主に教科学習のツールとして端末を活用。速読アプリの利用、授業のノート、課題も全て端末で完結する。「地域ビジネスコース」では、主にマーケティングの学習でチラシや名刺、広告物の制作に活用中だ。次はWebサイトを制作する予定でエンジニアコースの生徒のサポートが期待されている。スポーツをビジネスととらえる「スポーツマネジメントコースで」は、卒業生のプロサッカー選手らへのオンラインインタビューでも端末を活用している。校内の刊行物も Chromebook で制作したという。
教諭にも広がる Google for Education の活用
教諭らにも Google for Education の利用が急拡大している。最大のメリットは、Google フォームだという。授業の振り返り、生活記録、各種アンケートは集計が非常に楽で、効率が格段に上がった。例えばコロナ禍で毎日の体温を記録した用紙を生徒が毎日、紙ベースで提出していたが、Google フォームを用意してからは入力するだけだ。長郷教諭は化学の小テストも全てフォームで作成している。
NiAScience部では、ETロボコン(ETソフトウェアデザインロボットコンテスト。エンジニア及び大学生、高専生、専門学生が主な対象のソフトウェアの優劣を競うコンテスト。今年はパソコン上でのシミュレーター競技)に挑戦しており、九州大会においては走行分野1位・総合3位、全国でも好成績をおさめた。プログラミングでも、シミュレーターでも Chromebook を活用。また通常校務において成績処理と定期テストの整形以外はすべて Chromebook で完結できると笑顔を見せた。
コースを超えた生徒主体の学習活動で端末利用を拡大してゆく
来年度以降は、コースを超えた学習活動で端末利用を一層拡大したいと長郷教諭。例えば、スポーツとAIを組み合わせて運動のフォームや姿勢を分析するといった試みだ。「エンジニアコースは端末活用機会が多く得意な生徒が揃う。生徒は自分たちが使うだけでなく、将来はサービスを提供する立場になる。それをまずは校内で実現してほしい。既にWebサイト制作では他コースやオープンスクールにおける中学生へサポートを始めたが、もっと拡大したいしていきたい」と語る。
全てを教諭が指示するのではなく、校内の得意な生徒たちに広めてもらおうという姿勢が大事だという。生徒の自信につながり、教諭には思いつけない、生徒だからできる発見があって、豊かで自主的な学びにつながるからだ。
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